その他公開日:2022年8月9日 更新日:2022年9月6日

2022年10月 社会保険の適用拡大がスタート。企業が対応すべき加入義務適用の要件と手続き

社会保険の適用拡大とは、2022年10月以降、社会保険の加入対象外であった企業や従業員の加入が一部義務化されることです。 法改正以降、新設の条件を満たすパートやアルバイトの従業員(短時間労働者)が加入対象とされ、企業側の対応が求められます。
社会保険の加入が義務化される(被保険者)対象は、以前は「正規従業員(フルタイム従業員)」や「正規従業員の4分の3以上である従業員(パート・アルバイト等)」とされていましたが、2016年以降、従業員数500人超(501人以上)の企業に対して社会保険の適用拡大が実行され、2020年5月29日に成立した法改正では、その範囲が拡大されることになりました。
法改正の施行となる2022年10月には、特に従業員101人超の企業の担当者様、対象の従業員の皆様には、対応が必須となります。「被保険者資格取得届」の作成・提出や、社会保険料の負担、社内周知とコンセンサスの形成など多岐にわたる準備が必要です。
本特集では、社会保険適用拡大の再確認及び「特定適用事業所」と「短時間労働者」などの定義、特定適用事業所に該当するまでの手続き的な流れ等をご説明いたします。

1. 年金制度改正法と社会保険の適用拡大

少子高齢化、労働者層の多様化といった社会状況に対して、最適な年金制度に更新することを目的として法改正が行われました。

その法改正とは、2020年5月29日に成立した「年金制度改正法」(年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律)です。骨子は以下の通りになります。

  • 1.被用者保険の適用拡大
  • 2.在職中の年金受給の在り方の見直し
  • 3.受給開始時期の選択肢の拡大
  • 4.確定拠出年金の加入可能要件の見直し等
  • 5.その他
  • 詳しくは「年金制度改正法」の概要(厚生労働省)で確認ください

今回の法律の改正で、特に注目されているのが、「被用者保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大」、つまり社会保険の適用拡大です。

2. 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大のおさらい

2022年10月から実施される社会保険の適用拡大ですが、すでに従業員数500人超(501人以上)の企業に対しては社会保険の適用拡大が実施されています。今回の法改正(2020年5月29日に成立した「年金制度改正法」)で、社会保険の適用拡大は500人以下の企業・事業所に対して実施されることになりました。

  • すでに社会保険の適用拡大が実施されている企業
  • ・2016年10月から
    厚生年金の被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所
  • ・2017年4月から
    従業員数500人以下の企業は労使合意により、適用拡大が可能に

3. 「特定適用事業所」の定義と注意点

今回の「年金制度改正法」で、社会保険の適用拡大の対象範囲は段階的に実施され、2022年には従業員数100人超(101人以上)、2024年には50人超(51人以上)に適用されます

適用が拡大される事業所を「特定適用事業所」といい、次の要件に該当する事業所が「特定適用事業所」となります。法律改正に伴い「短時間労働者」の健康保険・厚生年金保険の適用が段階的に拡大されます。

  • 今後、社会保険の拡大が義務化される企業
  • ・2022年10月から
    厚生年金の被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所
  • ・2024年10月から
    厚生年金の被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時50人を超える事業所
「特定適用事業所」に該当した場合は、今まで取得する必要が無かった「短時間労働者」の被保険者資格を取得する義務が発生します。
以上のように、「特定適用事業所」に当たる企業では、要件を満たす一部のパート・アルバイト(短時間労働者)の年金や医療保険が変わります。
企業規模要件の「従業員数」ですが、いわゆる正社員数ではなく現時点での「被保険者」を指します。カウント方法は以下の通りです

  • ①フルタイムの労働者
  • ②週労働時間が通常の労働者の3/4以上の短時間労働者

①と②の合計数、つまり適用拡大以前の通常の被保険者の従業員数が100人超(2022年10月以降の場合)の場合、対象となります。

4. 2022年10月以降「特定適用事業所」に該当する企業における取り扱い

前述の通り、2022年10月から、厚生年金の被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所は「特定適用事業所」に該当しますが、注意点など、その取り扱いについて解説します。

(1)「被保険者の総数が常時 100 人を超える」とは?

同一の法人番号を有する全ての適用事業所の厚生年金保険の被保険者の総数が12 か月のうち、6か月以上について100 人を超えることが見込まれる場合のことです。

  • ・従業員数は月ごとにカウントが必要。直近12か月のうち6か月で基準を上回ると適用対象に
  • ・従業員数のカウントは、法人なら同一の法人番号を有する全事業所単位、個人事業主なら個々の事業所単位で行う

などの注意点があります。

  • ※解説が複雑になることから、適用事業所数の少ない個人事業所の説明は割愛いたします。

(2)「特定適用事業所」に該当した場合の手続きは?

同一の法人番号を有する全ての適用事業所を代表する本店又は主たる事業所から、日本年金機構事務センター、健保組合へ「特定適用事業所該当届」を届け出ることが義務付けられます。

ただし、以降にご解説する「特定適用事業所該当通知書」が送付された場合は、「特定適用事業所該当届」の届出は不要です。
なお、「特定適用事業所」に該当したタイミングより後に「特定適用事業所該当通知書」が送付される可能性もあり、遡り手続きを避けるためにも、自主的に「特定適用事業所該当届」を届け出ることが望まれます。

  • ※「特定適用事業所」に該当した場合は、「短時間労働者」の資格を取得する義務が発生しますので注意が必要です。

(3)施行日(2022年10月)における手続きは?

次のような流れで特定適用事業所に該当する手続きが進められます。

【特定適用事業所該当事前のお知らせ】の送付
日本年金機構において2021年10月から2022年7月までの各月のうち、厚生年金保険の被保険者の総数が6か月以上 100 人を超えたことが確認できる場合は、2022年8月頃に対象の適用事業所に対して「特定適用事業所該当事前のお知らせ」を送付し、2022年10月頃に「特定適用事業所該当通知書」を送付します。
日本年金機構において対象の適用事業所を“特定適用事業所に該当したもの”として扱います。
対象の適用事業所に対して「特定適用事業所該当通知書」を送付するため、“特定適用事業所該当届の届出は不要”です。
【特定適用事業所に該当する可能性がある旨のお知らせ】の送付
日本年金機構において2022年8月に、2021年10月から2022年7月までの各月のうち、厚生年金保険の被保険者の総数が5か月100 人を超えたことが確認できる場合は、2022年8月頃に対象の適用事業所に対して事前勧奨状として「特定適用事業所に該当する可能性がある旨のお知らせ」を送付します。
また、日本年金機構において2022年9月にも同様の確認を行い、直近11か月(2021年10月から2022年8月)で5か月100人を超えることが確認できる場合は、2022年9月頃に同通知を送付します。

(4)施行日(2022年10月)後における手続きは?

施行日後は、日本年金機構において、厚生年金保険の被保険者の総数が直近11か月のうち、5か月100人を超えたことが確認できた場合は、対象の適用事業所に対して、「特定適用事業所に該当する可能性がある旨のお知らせ」を送付します。

施行日後は、特定適用事業所に該当したにもかかわらず、日本年金機構事務センター等へ特定適用事業所該当届を届け出なかった場合は、日本年金機構において対象の適用事業所を特定適用事業所に該当したものとして扱い、対象の適用事業所に対して「特定適用事業所該当通知書」を送付します。

(5)人数が減少した場合の扱いは?

厚生年金保険の被保険者の総数が常時100人を超えなくなった場合であっても、引き続き特定適用事業所であるものとして取り扱われます。

ただし、使用される被保険者の4分の3以上の同意を得たことを証する書類を添えて、日本年金機構事務センター等へ特定適用事業所不該当届を届け出た場合は、対象の適用事業所は特定適用事業所に該当しなくなったものとして扱われることとなります。
詳細は次のURLよりご確認いただけます。
【PDF】短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(厚生労働省)

5. 「短時間労働者」の定義と基準

前述の通り、2022年10月から厚生年金の被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所は、「特定適用事業所」に該当する為、今まで取得する必要が無かったパート・アルバイト等の「短時間労働者」の被保険者資格を取得する義務が発生します。

令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(日本年金機構)
従来の被保険者にあたる従業員要件に加え、この「短時間労働者」とは、以下の4つの要件をすべて満たす従業員(短時間労働者)を指します。要件を満たす者を被保険者に加えることになります。

  • ①週の所定労働時間が20時間以上
  • ②月額賃金が88,000円(年収106万円以上)以上
  • ③2カ月を超える雇用の見込みがある
  • ④学生ではない
「短時間労働者」の資格を取得することにより、企業にとっては法定福利費(会社負担保険料)が増加します。
詳細は次のURLよりご確認頂けます。
【PDF】従業員数500人以下の事業主の皆様へ(厚生労働省)
この章では、「短時間労働者」の適用条件となる基準について詳しくみていきます。

①「週の所定労働時間が20時間以上」の基本的な判断

1週間の所定労働時間とは、就業規則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべきこととされている時間をいいます。

この場合の「通常の週」とは、祝祭日及びその振替休日、年末年始の休日、夏季休暇等の特別休日(週休日その他概ね1か月以内の期間を周期として規則的に与えられる休日以外の休日)を含まない週のことです。
【PDF】保保発0318第1号/年管管発0318第1号「第22 (1) ア」で確認することができます

(1)4週5休制のため、1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し一定ではない場合等

当該周期(この場合は4週)における1週間の所定労働時間を平均し、算出します。

【PDF】短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(厚生労働省)
※問28の回答で確認することができます。

(2)所定労働時間が1ヶ月単位で定められている場合

1ヵ月の所定労働時間を12ヵ月で掛けて年間所定労働時間を算出し、年間所定労働時間を52週(1年はおよそ52週の為)で割った時間を1週間の所定労働時間として判断します。

【PDF】短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(厚生労働省)
※問29の回答で確認することができます。

(3)所定労働時間が1年単位で定められている場合

年間所定労働時間を52週で割った時間を1週間の所定労働時間として判断します。

【PDF】短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(厚生労働省)
※問31の回答で確認することができます

(4)実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれる場合

実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格を取得することとなります。

【PDF】短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(厚生労働省)
※問32の回答で確認することができます

② 「月額賃金が88,000円以上」に算入する賃金と算入しない賃金の判断基準

基本給及び諸手当を算入することになっていますが、例外として以下の(1)から(4)までの賃金は算入しないことになっています。

  • (1)臨時に支払われる賃金(結婚手当、慶弔見舞金等)
  • (2)賞与や業績給等の1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
  • (3)時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(時間外労働手当、休日・深夜手当等の割増賃金等)
  • (4)最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)
  • ※最低賃金において算入しない賃金は次のURLよりご確認頂けます。
    最低賃金ー対象となる賃金は?ー(厚生労働省)

(1)と(2)は標準報酬月額を決定する際も原則報酬月額に算入しません
(3)と(4)は標準報酬月額を決定する際は報酬月額に算入するので、「月額賃金が88,000円以上」を判断する際は算入しないことに注意する必要があります。

【PDF】短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(厚生労働省)
※問41の回答で確認することができます

③2カ月を超える雇用の見込みがある

雇用契約が2カ月を超える場合はこの要件に該当することは明らかですが、雇用期間が2か月以内である場合であっても、次の(ア)(イ)のいずれかに該当するときは、定めた期間を超えることが見込まれることとして取り扱うこととされており、最初の雇用期間を含めて、当初から被保険者の資格を取得します。

  • (ア)就業規則、雇用契約書等その他書面においてその契約が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されていること
  • (イ)同一の事業所において同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により2カ月を超えて雇用された実績があること
なお、雇用時に2カ月を超える見込みであった場合、結果として雇用期間が2カ月未満になったとしても、被保険者の資格取得の取り消しをすることできません。

④学生ではない

学生ではないことが適用拡大される短時間労働者の要件の一つになっていますが、ここでの「学生」とは、主に高等学校の生徒、大学又は短期大学の学生、専修学校に在学する生徒等※が該当します。卒業した後も引き続き当該適用事業所に使用されることとなっている者、休学中の者、定時制課程及び通信制課程に在学する者その他これらに準じる者(いわゆる社会人大学院生等)はここでの「学生」から除かれる(学生ではない扱いとされる)こととなります。

  • ※(参考)厚生年金保険法施行規則第9条の6に規定する学生
  • ・高等学校に在学する生徒
  • ・中等教育学校に在学する生徒
  • ・特別支援学校に在学する生徒
  • ・大学(大学院を含む)に在学する学生
  • ・短期大学に在学する学生
  • ・高等専門学校に在学する学生
  • ・専修学校に在学する生徒
  • ・各種学校に在学する生徒(修業年限が1年以上である課程を履修する者に限る)
  • ・上記の教育施設に準ずる教育施設に在学する生徒又は学生
なお、「学生」であっても、適用事業所に使用され4分の3基準を満たす場合は、今までどおり正社員等と同様に一般被保険者として健康保険・厚生年金保険の被保険者となることに留意する必要があります。

6. 社会保険の適用拡大の企業への影響と対応ステップ

続いて、社会保険適用拡大により、企業にどのような影響を及ぼすのかを考えます。

第一に挙げられるのは、社会保険料の企業負担が増加することです。
資格取得をする短時間労働者が発生すれば、その分会社負担分の社会保険料が増え、法定福利費が増加します。
短時間労働者を多く抱えている企業にとっては、法定福利費の増加のみならず、手続きの負担も増えます。具体的には、資格取得届、資格喪失届の提出の数が増えるだけでなく、今までには無かった資格取得時に区分(一般被保険者or短時間労働者)を届出る必要があり、途中で区分が変わったときは区分変更届を提出しなければならないとった手続き上の負担も増加します。
その他に、副業兼業によって複数の事業所で社会保険の加入基準を満たす場合は、それぞれで資格取得をした上で、二以上事業所勤務届を提出しなければならない、社会保険料がそれぞれの報酬支払額を合算して決定されて、それぞれの会社には報酬支払額によって案分請求される、給与引き社会保険料も案分計算して控除しなければならないといった手続き上の負担増もあります。
また、雇用契約書上は週20時間未満になっていても、残業対応などで勤務時間が増え、週20時間以上の状態が2カ月以上続き、引き続き同様の状態が続く場合や続くことが見込まれる場合は3ヵ月目の初日に被保険者資格を取得しなければならない可能性があります。扶養の範囲で勤務している者が、資格取得をすることとなる場合はトラブルに発展する可能性もありますので、時間管理は今まで以上に留意する必要があります。
なかの経営労務事務所では、二以上事業所勤務届の対応も実績がありますので、各種ご相談や手続き代行などのサポートが可能です。

社会保険料の企業負担の増加の影響と対応

2022年10月の100人超(101人以上)の企業に対する社会保険適用拡大により我が国では新たに45万人が被保険者となり、2024年10月の50人超(51人以上)の企業に対する社会保険適用拡大により新たに65万人が被保険者になると2019年時点では推計されています。

企業側の対応として、社会保険適用拡大に伴い新たに被保険者となる者に対する社会保険料の負担増について試算する必要があります。社会保険料は会社と本人で半額を負担するので、今までの勤務形態であれば給与天引きすることとなる保険料見込額を本人に通知し、会社負担分保険料は必要コストとして予算組みするなどして認識しておく必要があります。
社会保険料はどうやって試算すればよいのでしょうか。
社会保険料は厚生労働省が公開している社会保険料簡単シュミレーターで試算することができます。
社会保険料簡単シュミレーター(厚生労働省)

「特定適用事業所」の社会保険適用拡大への対応ステップ

2022年の社会保険の適用拡大に対し企業はどういった対応を取るべきでしょうか。簡単なステップを紹介します。

①「特定適用事業所」にあたるかを確認

3.「特定適用事業所」の定義と注意点』の章を参考に、自社が「特定適用事業所」にあたるかを調査します。

②加入対象者の把握

自社が「特定適用事業所」にあたる場合、『5.「短時間労働者」の定義と基準』を参考に、社会保険の適用拡大の加入対象者に該当する従業員数を調査します。

③社内周知とコンセンサスの形成

新たに加入対象者となる従業員(パート・アルバイト)に対し、法律改正の内容や社会保険加入の対象となった理由などを伝えます。社内報やイントラネット、メールなどを活用して社内周知を行います。必要に応じて、説明会や個人面談を行い、社内コンセンサスの形成に努めます。個人面談では以下のポイントを参考に説明してください。

  • ・対象の従業員に対し、社会保険の加入対象者であることを伝える
  • ・社会保険の加入メリット・デメリットを伝える
  • ・対象従業員の今後の働き方(労働時間等)について話合う
対象の従業員側のメリット・デメリットについては次章『7.社会保険の適用拡大の従業員への影響』の章で解説します。

④書類の作成・届出

4.2022年10月以降に「特定適用事業所」に該当する企業における取り扱い』で解説したように、2022年8月頃に対象の適用事業所に対して「特定適用事業所該当事前のお知らせ」が送付されます。企業側は届出を作成し、2022年10 月5日まで(オンライン届出の場合)に「特定適用事業所該当通知書」を送付します。

7. 社会保険の適用拡大の従業員への影響

最後に、社会保険の適用拡大の対象となる従業員側のメリット、デメリットについて解説します。前述の社内周知・コンセンサスの形成にも必要となるため、企業側でも理解を深めておく必要があります。

【PDF】(加入対象者向け)社会保険適用ガイドブック(厚生労働省)

社会保険加入による従業員(パート・アルバイト等)のメリット

社会保険に加入することで次のようなメリットが従業員側に発生します。

  • ・厚生年金保険に加入できるメリット
     老齢年金、障害年金、遺族年金が2階建てになり、将来受け取る年金受給額が増額されます(障害厚生年金は初診日等の細かい要件がありますので要件に該当する場合に支給されます)。
  • ・健康保険に加入できるメリット
    業務上や通勤途上以外の事由によるケガや病気で働けなくなったときに傷病手当金を受け取ることができます。
    産前産後休業期間中で勤務できない場合に出産手当金の支給を受けることができます。

また、国民健康保険と国民年金の保険料は全額本人負担ですが、社会保険は会社と本人で折半負担になりますので、報酬月額によっては今までよりも保険料が安くなる場合があります。

社会保険加入による従業員(パート・アルバイト等)のデメリット

以下のような従業員側のデメリットと対応策を解説ください。

今まで健康保険の扶養の範囲内(年収130万円未満など)で勤務していた場合は、健康保険、介護保険、国民年金の保険料が発生していませんでした。
2022年10月以降は年収130万円未満に抑えていたとしても、適用拡大の要件(週20時間以上働き、月給8.8万円以上など)の要件を満たした場合は勤務先で社会保険に加入する必要があります。社会保険に加入することにより、新たに健康保険料、介護保険料(40歳以上65歳未満)、厚生年金保険料が発生し、給与から天引きされ保険料負担が発生します。
引き続き扶養の範囲で勤務したい場合は、年収130万円未満に抑えるだけでなく、勤務先での釈迦保険加入要件を満たさない範囲で勤務する必要があります。
新たな保険料負担は発生しますが、補償は充実しますので、これをデメリットと捉えるかは本人の考え方次第であると思われます。

まとめ

まず、国の立場及び考え方を説明します。

2016年10月から2022年9月までは、従業員 500 人以下の企業で働く短時間労働者の多くは、被用者(雇用される者)であるにも関わらず、将来厚生年金を受給できない仕組みになっています。
一方個人の立場から見れば、どの企業で働こうと被用者であることは変わりがなく、自らが雇用される企業の規模によって、被用者に適用される社会保険(健康保険・厚生年金保険のことをいう、以下同じ)の適用の有無が異なることは公平ではないという考え方も成立します。
つまり、被用者である者には社会保険を適用するのが原則であるという考え方です。
(本来、適用事業所に勤務する労働者はその事業所の規模を問わず社会保険が適用されるというのが制度の原則的考え方であり、現在 500 人以下の企業に対して、短時間労働者への社会保険の適用が除外されているのは、あくまでも法附則による経過措置であるとの位置づけです)
社会保険を適用拡大することにより、基礎年金に加え、2階部分の年金保障を確保することにより、低年金・無年金リスクを低減することができます。
特に、いわゆる就職氷河期世代は、現在では30代後半から40代後半に至っており、正規雇用を希望しながら不本意にパート・非正規雇用で働く者に対し、社会保険の適用拡大を通じて就労を通じた保障の充実を図ることは、我が国にとって待ったなしの課題です。
さらに、社会保険の適用拡大は、現在被用者でありながら国民年金加入者となっている者が、厚生年金の被保険者となることで、給与から厚生年金保険料が天引きされ、それを事業主が納付義務を負うことで納付率が向上し国民年金財政を改善させ、基礎年金水準の確保につながります。
結果として、年金制度の所得再分配機能の強化にもつながります。
上記より、現行の 500人超という企業規模要件は、本来全ての被用者に被用者保険が適用されるように見直されるべき、という考えを国はとっています。
そこで2020年改正法では、50人超規模の企業まで適用するスケジュールが明記されました。
50人以下の企業についても、今回の改正が与える影響に配慮しつつ、引き続き検討を進めるべきであるとされています。
次に、私見を以下のとおり述べます。
我が国における少子高齢化の進展、生産年齢人口の減少、就業者数に占める非正規労働者の割合の高止まり、いわゆる就職氷河期世代の低年金・無年金問題、保険料免除を除く国民年金納付率の実態などを考慮すると、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大は避けてとおれず、やむを得ない施策であると考えます。
国の施策としてはやむを得ないとしても、社会保険適用拡大に対して義務や負担を負うのは企業です。
既にご説明したとおり、短時間労働者の適用拡大に対する企業の負担は非常に大きなものがあります。
そこで現実的には次のような対応策が考えられます。

  • ・短時間労働者本人と個別面談等で話し合い、社会保険適用拡大の基準を満たさない範囲で勤務することを徹底する→社会保険に加入しない、社会保険料負担なし
  • ・短時間労働者本人と個別面談等で話し合い、短時間労働者として社会保険に加入する→区分変更手続きや二以上事業所勤務届など面倒な手続きが発生する可能性あり、社会保険料負担あり
  • ・短時間労働者本人と個別面談等で話し合い、むしろ勤務調整するのではなくフルタイム又はフルタイムに近い勤務形態で働く→区分変更手続きや二以上事業所勤務届など面倒な手続きは発生しない、社会保険料負担あり
社会保険適用拡大の対象となる短時間労働者が多数いる場合は、個別面談に先立ち、説明会を実施した方が効率的でしょう。