その他公開日:2022年1月11日

派遣労働者の労働契約申込みみなし制度を初適用した判決が出されました

業務請負で働いていた労働者5人について「派遣労働者の労働契約申込みみなし制」の適用を求めた事案で、大阪高等裁判所は直接雇用成立を認め偽装請負で役務の提供を受けていた会社に対してバックペイの支払いを命じました。
「派遣労働者の労働契約申込みみなし制」の適用を認めた判決は全国初とみられています。

(1)事件の概要

住宅建材の製造販売会社のA社は、平成11年にB社と業務請負契約を締結しました。

その後、B社で雇用する5人の労働者は労働組合を結成して、平成29年にはA社が偽装請負をしているとしてA社に対して労働契約申込みみなし制度に基づく労働契約の承諾通知を送付しA社に対して直接雇用に関する団体交渉を申し入れました。
A社は使用者には当たらないとして拒否し、平成29年にB社との業務請負契約を終了し、5人はB社を整理解雇され裁判を提起しました。

(2)地裁判決の概要

1審の地裁は、A社はB社の労働者に対して業務遂行上の指示をしておらず、偽装請負の状態にあったとまではいえないと判断し、労働者側の請求を全面的に棄却しました。

(3)高裁判決の概要

2審の高裁は一転して労働者側の請求を全面的に受け入れ、A社はB社の労働者に対して具体的な作業手順を指示し、B社が業務の遂行方法を自ら指示していたとは認められないとして偽装請負にあたると判断しました。

高裁は承諾の意思表示をした時点で労働契約が成立するため、その後行われた整理解雇は新たな労働契約に影響しないと退けています。
よって平成29年にさかのぼって労働契約が成立しているとして、労働契約上の地位の確認とバックペイの支払いを命じました。

(4)労働契約申込みみなし制度とは

労働契約申込みみなし制度とは

  • ・派遣先等が違法派遣を受けた時点で
  • ・派遣先等が派遣労働者に対して
  • ・その派遣労働者の雇用主(派遣元事業者)との労働条件と同じ内容の労働条件を申し込んだとみなす

制度です。

違法派遣には偽装請負も含まれます。
【PDF】労働契約申込みみなし制度の概要(厚生労働省)

(5)偽装請負とは

偽装請負とは、契約書などの書類上は仕事の完成を目的とした発注者と受託者の労働者との間に指揮命令関係が生じない請負契約や委託契約ですが、発注者と受託者の労働者との間に指揮命令関係が生じているなど実体としては労働者派遣である形態です。

このような形態はいわゆる偽装請負となり労働者派遣法違反となります。
製造業、建築業、倉庫業などを含む運輸業の現場作業等を中心に、業務請負契約により業務遂行をしているケースが今でも多く見受けられます。
また、製造業、卸売業などでは、客先である小売業の店舗応援を目的として、製造業、卸売業で雇用する労働者を、雇用関係の無い小売業の店舗で業務に従事させるケースも見受けられます。
適法に運用されていれば問題はありませんが、実態が違法であるとして偽装請負と認定されると、遡っての直接雇用や賃金のバックペイのリスクが生じます。
偽装請負に該当していないことを今一度確認されることをお勧めします。
偽装請負や派遣法の詳細については次のURLでご確認いただけます。
あなたの使用者はだれですか?偽装請負ってナニ?(東京労働局)
【PDF】労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド(厚生労働省)
派遣労働者の受入れ(厚生労働省)
【PDF】派遣社員を受け入れるときの主なポイント(厚生労働省)