その他 更新日:2024年3月14日

『定額減税』実施! 2024年6月以降の所得税の実務対応について解説【給与担当者・責任者必見!】

2023年11月に取りまとめた「デフレ完全脱却のための総合経済対策」に盛り込まれた「定額減税」が、2024年6月以降に実施されます。

実施後は、企業の給与担当者に相応の実務が発生します。
本記事では、所得税の「定額減税」の概要と、所得税の「定額減税」の実務に焦点を当てて、解説します。

「所得税の定額減税」の概要

2023年11月に取りまとめた「デフレ完全脱却のための総合経済対策」に盛り込まれた「定額減税」が、「令和6年度税制改正大綱」に明記され、通常国会での法改正を経て、2024年6月以降に1人当たり4万円の定額減税が実施されます。

4万円の定額減税の内訳は、令和6年分の所得税・令和6年度分の個人住民税について、納税者及び配偶者を含めた扶養親族1人につき、所得税3万円・個人住民税1万円を控除するという内容です。
ただし、納税者の合計所得金額が1,805万円以下である場合に限ります。
所得税については、2024年6月1日以後に最初に支払う給与所得等につき、「給与支払者(会社)」が源泉徴収を行う際に、定額減税を実施します。
従って、2024年6月支給給与又は賞与から控除する所得税は、通常の計算で算出した所得税を控除するのではなく、定額減税後の所得税を控除することになり、給与計算実務において大きな負担となります。
年末調整においても、定額減税額を確定させ、過不足を精算するなどの事務が発生し、給与計算実務において大きな負担となります。
詳細については次のURLよりご確認頂けます。
ここがポイント!令和6年度税制改正 定額減税(自民党)

「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を決定しました(内閣府)

【PDF】デフレ完全脱却のための総合経済対策~日本経済の新たなステージにむけて~(内閣府)

令和6年度税制改正の大綱の概要(財務省)

「所得税の定額減税」の実務の流れについて解説

所得税の定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が 1,805 万円以下である人です。
先行して6月に定額減税を行い、年調(年末調整)により定額減税額を確定させる流れです。
上記より給与支払者(会社)は以下の2つの事務を行う必要があります

  • (1)令和6年6月1日以後に支払う給与等(賞与を含みます。以下同じです。)に対する源泉所得税額からその時点の定額減税額を控除する事務(月次減税事務)
  • (2)年末調整の際、年末調整時点の定額減税額に基づき精算を行う事務(年調減税事務)
以下、概要について説明します。

(1)令和6年6月1日以後に支払う給与等(賞与を含みます。以下同じです。)に対する源泉所得税額からその時点の定額減税額を控除する事務(月次減税事務)

・控除対象者の確認
令和6年6月1日現在、給与支払者のもとで勤務している甲欄適用の居住者である従業員が控除対象者(月次減税事務の対象)になります。

・各人別控除事績簿の作成
月次減税事務においては、各人別の月次減税額と各月の控除額等を管理することとなります。
国税庁では、源泉徴収事務の便宜のために「各人別控除事績簿」を公表しました(使用は任意です)。

・月次減税額の計算
控除対象者ことの月次減税額は、「同一整形配偶者と扶養親族の数」に応じて、「本人30,000円」と「同一生計配偶者と扶養親族1人につき30,000円」との合計額になります。

次の手順で月次減税額を計算します。

  • イ.居住者である同一生計配偶者の確認
  • ロ.居住者である扶養親族の確認
  • ハ.扶養控除申告書に記載していない同一生計配偶者等に係る申告
    扶養控除等申告書に記載していない同一生計配偶者や16歳未満の扶養親族については、「源泉徴収に係る定額減税の為の申告書」の提出を受けることで、月次減税額の計算の人数に含めることができます。
  • ニ.月次減税額の計算
・月次減税額の控除

(2)年末調整の際、年末調整時点の定額減税額に基づき精算を行う事務(年調減税事務)

・対象者の確認

・年調減税額の計算

・年調減税額の控除

  • イ.年調所得税額の計算
    通常どおり年調を行います。
    月次減税の控除を行った後の実際に源泉徴収した税額(2024年中の徴収済み源泉所得税額)を集計します。
  • ロ.年調減税額の控除
    通常どおり年調を行った結果の年調所得税額から年調減税額の控除を行い、2024年中の徴収済み源泉所得税額との過不足額の精算を行います。
    年調の過不足額の精算における2024年中の徴収済み源泉所得税額は、各月の控除前税額から月次税額を控除した残額の合計額です。
詳細は次のURLよりご確認頂けます。
定額減税 特設サイト(国税庁)
定額減税について(国税庁)
パンフレット・Q&A(国税庁)

国税庁より「所得税の定額減税」に関する関係様式案が公表されています

会社が所得税の定額減税を実施するにあたり、国税庁より必要な関係様式案が公表されています。

関係様式案は次の3点です。

  • (1)各人別控除事績簿
  • (2)令和6年分 源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書
  • (3)令和6年分 年末調整に係る定額減税のための申告書
    (令和6年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書)
以下、関係様式案について一つ一つ概要を説明いたします。

(1)各人別控除事績簿

基準日在職者(受給者の氏名)欄、月次減税額の計算欄、月次減税額の控除欄、備考欄で構成されています。

月次減税額の計算欄は、「(1)同一生計配偶者と扶養親族の数」と「(2)月次減税額((受給者本人+(1)の人数)× 30,000円)」、月次減税額の控除欄は、控除前税額、控除前税額から控除した金額、控除しきれない金額の3つを記載する欄で構成されています。
各人別控除事績簿の作成及び様式は法定されたものではないことから、作成は義務ではなく、作成に当たっては適宜の様式で差し支えありません。

(2)令和6年分 源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書

同一生計配偶者や扶養親族につき定額減税額を加算して控除を受けようとする場合に提出する為の申告書です。

ただし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記入した源泉控除対象配偶者や扶養親族及び「給与所得者の配偶者控除等申告書」に記入した控除対象配偶者については、この申告書への記載は不要です。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」、「給与所得者の配偶者控除等申告書」より変更がなければ、この申告書は不要です。
この申告書を使用する場合は、令和6年6月1日以後最初に支払いを受ける給与(賞与を含む)の支払日までに、この申告書を給与の支払者に提出する必要があります。

(3)令和6年分 年末調整に係る定額減税のための申告書

(令和6年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書)

給与所得者の基礎控除申告書、給与所得者の配偶者控除等申告書及び所得金額調整控除申告書との兼用様式になっています。
通常どおり、年末調整の時期に配付し回収することになります。
詳細は次のURLよりご確認頂けます。
様式・記載例(国税庁)