労務管理と人事管理の違いとは?
〜人事コンサルタントが詳しく解説〜

「人事労務」や「人事労務管理」というように、世間では「人事」と「労務」を区別せずに使用する場合の方が多いと思います。

企業に目を移すと、「人事課」や「労務課」、「人事担当者」や「労務担当者」といった具合に区別しているケースが見受けられます。
それでは「人事管理」と「労務管理」には違いがあるのでしょうか?違いがある場合、それぞれの定義はどのようなものでしょうか?

Q.労務管理と人事管理の違いはありますか?

A.
労務管理、人事管理を区別する確立された定義はどこにも存在しません。
企業を取り巻く環境や、企業の価値観等によって、企業ごとに定義してよいのです。
以下に、上記の回答の理由を詳しく見ていきましょう。

戦前の労務管理、人事管理の捉え方

第二次世界大戦前の日本では、「労務管理」といえば、もっぱら工場などの現場の労働者(ブルーカラー労働者)の管理を指し、一方で「人事管理」は事務系の労働者(ホワイトカラー労働者)の管理のことだったようです。

近年の労務管理、人事管理の捉え方

戦後はブルーカラーやホワイトカラーの管理といった、ある種の差別的なやり方は次第になくなっていき、今では「使われない言葉」になっていると言っても過言ではないと思います。

現在では「労務管理」や「人事管理」はその論者や企業によって様々な意味で使われています。
日本だけではありません。現在において人事労務管理に関連する英米語においても、確立された一つの用語があるわけではなく、

    ・personnel
    ・personnel management
    ・manpower management
    ・labor management
    ・industrial relations
    ・labor relations
    ・human resources
など様々な言葉が使用されているようです。
このように様々な言葉が使われている背景は、人事労務管理の捉え方などが、その時々の社会的事情に影響を受けていることが挙げられます。

労務管理、人事管理を区別する確立された定義は無い

ネットを検索すると、「労務管理と人事管理の違い」は以下のように定義されていることが多いようです

「労務管理」とは?

労働時間や休暇などの勤怠管理
就業規則の作成
給与計算
社会保険手続き
安全衛生、健康管理の実施

ほか、職場環境を整える業務など、いわば労働基準法や安全衛生法等の法令に直接関係する業務

「人事管理」とは?

採用活動
人材育成
人員配置
人事評価制度の企画運用
賃金や賞与の決定

など法令に関係はするが、企業独自に働く「ヒト」を管理することにより組織の活性化を図る業務

しかしながら、労務管理、人事管理を区別する確立された定義はどこにも存在しません。
敢えて区別しなくてもよいでしょうし、区別する場合は企業ごとに捉え方は異なります。
労務管理の定義はこうでなければならない、人事管理の定義はこうでなければならない、といった具合に縛られる必要は無く、仮に定義したとしても自社で定義した内容を他者から批判されるようなものでもありません。
企業を取り巻く環境や企業のその時々の価値観等によって変化させ、企業ごとに定義して良いのです。