社労士が人事コンサルタントになるためには

筆者は定期的に開催される人事コンサルタント養成講座(研修・セミナー)の講師を務めていますが、その際に感じるのは、人事コンサルタントとして人事評価制度・賃金制度を構築するスキルを身につけたい、そういったご要望が増加傾向にあることです。

これは例えば開業社労士のケースであれば、他の事務所と差別化を図りたい、既存の顧問先から人事評価制度や賃金制度について質問を受けるのでその要望に的確に応えたいことなどが動機として挙げられるのではないかと考えています。

同時に人事評価制度や賃金制度の書籍を読んだり、過去に人事評価制度や賃金制度の研修やセミナーを受講したりしたが、上手くいかず挫折した、という話を聞くこともあります。挫折には個別に様々な理由があると思われますが、挫折せず人事コンサルタントになるためには、以下のポイントを押さえた上で進めることが重要であると筆者は考えます。

1.常に企業のビジネスモデルに関心を持つこと

まず、常に企業のビジネスモデルに関心を持つことが求められます。

一見人事コンサルティングと関係が無いように思われますが、企業のビジネスモデルを理解することで、その企業が直面する課題やニーズの把握を進めやすくする効果が得られ、人事コンサルティングを行う中でより的確なアドバイスを提供することが可能となります。
例えば、製造業とサービス業ではビジネスモデルが大きく異なり、それぞれの業界特有の課題やニーズが存在します。製造業では生産効率やコスト削減が重要視されることが多いと思われますが、サービス業では顧客満足度やサービス品質がより重視される傾向にあると思われます。
業種が同じでも、経営理念等の違いにより、企業によってビジネスモデルが大きく異なる場合もあります。これらの違いを理解することは人事コンサルティングのベースとなる事項であり必須事項の一つです。
企業ごとのビジネスモデルの違いを理解した上で、その企業の構成員である「ヒト」に関する人事コンサルティングにあたることが何よりも重要です。

2.人事評価制度・賃金制度に関する基本的知識を押さえること

次に、人事評価制度や賃金制度に関する基本的知識を押さえることが必要です。

特に注意したいのは、自分自身が書籍等で学んで作り上げた単に良いところどりのツギハギの人事評価制度・賃金制度ではなく、理論に裏付けられた一気通貫し体系立った人事評価制度・賃金制度の基礎知識を学ぶことがとても重要である、ということです。
これにより、人事制度全体の整合性を保ちつつ、企業のニーズに応じた適切な人事評価制度・賃金制度の設計が可能となります。例えば、人事評価制度と賃金制度がうまく連動できない場合、運用に支障が生じたり、社員のモチベーションが低下したりする危険性があります。
一方で、人事評価制度と賃金制度が体系立っており一貫している場合、スムーズに運用でき、さらに社員は自分の努力が正当に評価されたと感じモチベーションが向上します。
社員のモチベーションの向上は、結果的に企業の業績アップに繋がります。
このように、体系立ち一貫した人事評価制度・賃金制度の設計が企業の業績アップに繋がり、クライアント企業のニーズに叶うのです。その為、理論に裏付けられた一気通貫し体系立った人事評価制度・賃金制度の基礎知識をしっかりと学ぶことが重要です。

3.実践的な人事評価制度・賃金制度の構築プロセスを学ぶ機会を自ら獲得すること

上記2で、人事評価制度・賃金制度に関する基本的知識を押さえた後は、実践的な人事評価制度・賃金制度の構築プロセスを学ぶ機会を自ら獲得することが重要になります。

専門書を読むだけでなく、例えば、人事コンサルティングの手伝いをしたり、実践的な人事評価制度・賃金制度の構築プロセスを学ぶことが出来る講座・研修・セミナー等に参加したりすることで、実践的な知識を深めることが考えられます。
人事コンサルティングの手伝いをする機会は非常に限られているので、人事コンサルタントを養成することを目的とした有償の講座・研修・セミナー等に参加することが現実的でしょう。
有償の講座・研修・セミナー等に参加する行為は支出を伴う先行投資です。このような先行投資を行うことで、実践的なコンサルティング知識のみならず、人事評価制度・賃金制度の構築作業を体感することができます。受講する講座・研修・セミナーによっては、最新のトレンドやベストプラクティスを学ぶこともできます。
このような先行投資を惜しまず行うことで、自分自身のスキルを高め、クライアント企業に対してより高い付加価値を提供することができるようになるでしょう。

4.世の中の動向に常に興味を持ちその動向に対して自分の考えを持つこと

世の中の動向に常に興味を持ち、その動向に対して自分の考えを持つことも重要です。

人事コンサルティングの現場では、例えば、メンバーシップ型やジョブ型といった雇用形態の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて理解し、自分なりの見解を持つことが求められます。
そして、クライアントの要望を聴き取り、クライアントのニーズを満たした人事評価制度や賃金制度を構築することが求められるのです。経営者の中には世の中の動向に敏感な方も多くいらっしゃいます。
人事コンサルタントは、経営者の質問に対して適切に答えることを通じて信頼関係のベースを構築し、さらにクライアント企業のニーズを満たした人事評価制度・賃金制度を構築することができるようになります。

5.Excel(関数やグラフ作成等)、Word、PowerPointの基本的知識を身に着けること

最後に、Excel(関数やグラフ作成等)、Word、PowerPointの基本的知識を身に着けることも欠かせません。これらのツールを使いこなすことで、人事評価制度や賃金制度の現状分析、現状分析結果の報告書作成、企画書の作成、プレゼンテーションなどの業務を効率的に行うことができます。

例えば、Excelを使って社員の賃金支払い実績等を分析し、グラフを作成することで、視覚的にわかりやすい報告書を作成することができます。
また、Wordを使って詳細な報告書を作成し、PowerPointを使ってプレゼンテーションを行うことで、クライアント企業に対して効果的に情報を伝えることができます。
これらのツールを使いこなすことで、業務の効率化を図り、より高いレベルのコンサルティングを提供することができるようになります。

以上のポイントを押さえて進めることが、挫折せず人事コンサルタントとしての第一歩を踏み出す為の最低条件です。

なかの経営労務事務所では、人事コンサルタント養成講座(セミナー・研修)を定期的に開催しています。

人事コンサルタント養成講座(セミナー・研修)では、上記2に該当する「こぢんまり人事制度」をベースにて、上記3に該当する「実践的な人事評価制度・賃金制度の構築プロセスを学ぶ機会」を提供します。

講義では上記4の「世の中の動向に常に興味を持ちその動向に対して自分の考えを持つこと」についてや、上記5「Excel(関数やグラフ作成等)、Word、PowerPointの基本的知識を身に着けること」についても随時触れていきます。

人事コンサルタントとしての第一歩を踏み出す為に、人事コンサルタント養成講座(セミナー・研修)への参加を是非ご検討ください。