人事コンサルタントに向いている人はどのような人か
私、中野 剛は2010年に独立開業して社労士事務所「なかの経営労務事務所」を設立し、2015年には人事コンサルティングや人事系アウトソーシングを専門とする「トータル人事ソリューションズ株式会社」を設立しました。今では毎年2回『人事コンサルタント養成講座』を開き、人事コンサルタントを目指す多くの受講生の皆さんと共に学びを進めています。
独立開業当初は、私が人事コンサルティング(本記事では人事評価制度・賃金制度に限定、以下同じ)を今のレベルで実施できるようになるとは夢にも思っていませんでした。
それではなぜ、素人だった私が人事評価制度や賃金制度のコンサルティングを実施できるようになったのでしょうか。
以下、私の経験や考えを踏まえ「人事コンサルタントに向いている人」を考察していきます。
目次
企業での人事部門の勤務経験だけでは人事コンサルタントになるのは難しい
私は独立開業前(20代後半から30代前半のとき)に、東証一部(現東証プライム)上場企業の人事部門で勤務し人事諸制度の運用に携わっていたことがありました。
業務を運用するのに精一杯だった日々
今になって思えば人事諸制度の骨組みとなる理論などは深く考えず日々の運用を自分の役割としてこなしていました。
疑問に思う事柄を調べようと思うことはありましたが、当時は目前の仕事をこなすことが主目的であると認識し、時間を捻出して調べようとはしませんでした。
企業での人事部門の勤務経験で得られるもの
このような私のマインドで日々勤務経験を積んでも人事コンサルタントにはなれません。
企業規模にもよりますが、人事制度の企画・運用等に携わることができたとしても、企業内の役割分担から人事制度全般に関わることは稀であり、ほんの一部しか経験できないことはよくある事例だと感じています。
私のような事例に該当しない人もいらっしゃると思いますが、近しい経験をされている方は多いのではないでしょうか。
社労士事務所に勤めただけでは人事コンサルタントになるのは難しい
多くの社労士事務所(社労士法人を含む、以下同じ)において基本的な業務の柱は、労務相談、社会保険手続き代行、就業規則作成だと思います。労務相談には人事評価制度や賃金制度の構築、改定、運用に関する積極的な相談受付は含まれていないことが圧倒的に多いように感じています。さらに人事評価制度や賃金制度の構築・改正コンサルティングを積極的に実施している社労士事務所は少数だと思います。
私は独立前(20代半ば)に社労士事務所で勤務した経験がありますが、その勤務経験では多くの時間を労務相談、社保手続き、給与計算、就業規則作成、助成金の申請に割かれ人事制度の相談を受けることはほとんどありませんでした。
顧問先の事務担当者とのやりとりに終始し、事務処理は大切なことではありますが事務処理が間違いなく遂行できていることに満足していることがほとんどでした。
『顧客支援』に応えきれないもどかしさ
顧問先企業の責任者から人事制度の相談を受けることは少ないながらありましたが、私の知識・経験不足のみならず勤務先の社労士事務所での支援体制が十分ではなく、的を射た回答をすることが出来きていなかったと思います。
顧客を支援しようと強く思えば思うほど、相談可能な業務範囲は人事制度まで広げておきたいところですが、個人の力には限界がありますので事務所側の支援体制がなければ思うように顧客を支援することはできません。
このように私と近しく苦々しい経験をされた方はいらっしゃるのではないでしょうか。顧客満足の為に、自身のやりがいの為に、対応可能な業務範囲を広げたいと思っている方はいらっしゃるのではないかと思います。
では人事コンサルタントになる為にはどうすればよいか
人事コンサルタントは人事制度のプロフェッショナルなので幅広い相談に対応できるようにならなければなりません。幅広い相談に対応できるようになる為にはまずは「理論」を学ぶことが重要です。理論を学んだあとは「実践経験」を積むことです。
恩師である河合先生との出会い
素人だった私が人事コンサルタントになれたのは河合克彦先生のおかげです。河合克彦先生との出会いがあり、河合先生は人事コンサルタントとして仕事に取り組む姿勢が社労士とは全く異なることを肌身で実感しました。
人事コンサルタントになる学びのステップ
次に私の経験からより具体的に人事コンサルタントになるためにはどのように進めていけば良いのかを解説していきます。人事制度の理論を学ぶ
人事コンサルティング会社に転職して人事制度の理論を学びながら実践経験を積むことできればよいのですが、未経験者が人事コンサルティング会社に転職することは難しいケースが多いでしょう。
全ての流派を学ぶのではなく、自分の中で腑に落ちるものをまず選択して集中的に勉強しそれを自分自身の「軸」としましょう。
私の場合は河合克彦先生との出会いがあり、役割・能力・成果をバランスさせた「トライアングル人事システム」を集中的に学び軸としました。「トライアングル人事システム」を軸とした理由は役割・能力・成果のバランスのさせ方に無駄や重複が少なく私にとって腑に落ちる制度だったからです。
実践経験を積む
人事コンサルティング会社に転職して実践経験を積むことができればよいのですが、未経験者が人事コンサルティング会社に転職することは難しいケースが多いでしょう。
企業に所属している限りはプロフェッショナルの第三者視点のアドバイスとして聞いてもらえず、一人の部下の意見として役員は聞いてしまうことは良くあるケースだと感じています。サラリーマンの上下関係には抗えないということです。
社労士事務所を経営している方や勤務している方については、顧問先企業がありますので既に企業の経営者や人事部門の責任者との接点があります。若い人が辞めていく、管理職の自覚が足りない、社内コミュニケーションが悪い、協調協働が足りない、などの相談を受けた場合はすぐに人事制度の内容を確認するような質問をしましょう。
質問に対する回答があった場合、その回答の内容から課題を導き出しその課題解決をするようなアドバイスをしましょう。このようなやり取りを繰り返せば少ないながら実践経験を積むことができます。
そして少ないながら積んだ実践経験が実を結び、大きな人事コンサルティング案件の受注につながります。
私の場合は「なかの経営労務事務所」を設立後、顧問先企業に対して積極的に質問し課題解決するようなアドバイスを心がけ、それを繰り返すことで今では毎年安定した件数の人事コンサルティングを受注することができるようになりました。
最初は小さな内容の質問でも構いません。それを繰り返すことができれば将来的には大きな案件の受注につながるでしょう。
どのような人が人事コンサルタントに向いているのか
これまで「人事コンサルタントになるためにはどうすればよいか」について解説してきましたが、「人事制度の理論を学ぶこと」、「実践経験を積むこと」に集約されます。
理論を学んで「自分自身の軸」を持てる人
人事コンサルタントを目指すために、様々な書籍を読み、様々な講師のセミナーを受講した上で「良いところ取り」をして自分自身の人事制度を構築しようとする方がいらっしゃいます。これは相当高度な手法であり未経験者が「良いところ取り」をして自分自身の人事制度を構築することは極めて困難です。企業内の様々な問題を解決する人事制度は、自分のものにした(自分自身の軸を基準にした)一気通貫した理論が無ければならない為です。
人事コンサルタントに向いている人の一つ目の条件としては、自分自身で腑に落ちる人事制度を見つけてその人事制度の理論を徹底的に学び、自分のものにした自分自身の軸を持てる人です。
社労士試験に合格した人は勉強家なので「理論」を学ぶことは一生懸命であることが多いように思います。しかしながら「自分のものにした自分自身の軸」を持てるようになるまで学び続ける人は少数派であるようにも思います。「理論」だけを学んでも、企業の課題を解決する為に自分自身の軸を持つまで学ぼう、といった目的意識がなければ、他の業務との優先順位の関係から学びはストップしてしまい、せっかく学んだ理論の忘却が始まります。これは人事コンサルタントになる夢も持っていても、次のステップに踏み出すことができない根本的な原因であると考えています。
「理論を学んで自分自身の軸を持てる人」は人事コンサルタントに向いている人の土台となる重要事項なのです。
実践経験を積む「行動力がある人」
人事コンサルタントに向いている人の一つ目の条件としては「理論を学んで自分自身の軸を持てる人」でした。「自分自身の軸」を持つことが出来れば他者と差別化する大きな強みになります。しかしながら強みを持っていてもそれを活かすことが出来なければ意味がありません。
実践経験の積み方は既に述べたとおりで、社労士事務所に勤務している方、社労士事務所を経営している方であれば、顧問先企業がありますのでその顧問先の担当者とコミュニケーションを密にとり、人事制度に関連する課題があればその課題を解決するアドバイスをして小さな実践経験を積むことができます。顧問先の担当者が経営者や人事部門責任者であればスムーズに進めることができますが、顧問先の担当者が専ら事務を担当している場合、人事制度の設計等はその担当者の業務範囲外になっている場合があります。担当者の業務範囲外となっていても人事制度の課題解決は企業内の最重要事項の一つと位置付けられていることが多いので、アドバイスが的を射ている場合は経営者や人事部門責任者へつないでくれることが多い実感をもっています。
粘り強く率先して実践経験を積む行動力がある人、これが人事コンサルタントに向いている人の二つ目の条件です。
企業経営の支援に興味がある人
人事コンサルタントに向いている人の条件を二つみてきましたが、人事コンサルタントに向いている人の三つ目の条件は「企業経営に興味がある人」です。
顧問先との契約内容が、社会保険手続きなど事務処理が中心となっている場合、顧問先の企業経営にほとんど興味がなく、事務的なやり取りで委託業務を遂行することに最大の喜びを感じているような人は、人事コンサルタントに向いている人の条件である「理論を学んで自分自身の軸を持つこと」、「実践経験を積むこと」ことを継続できないケースを多く見てきました。継続できない理由は事務処理の遂行を最優先とし、「理論を学んで自分自身の軸を持つこと」、「実践経験を積むこと」の優先順が著しく低下して疎かになる為であると私は理解しています。
企業の経営資源はヒト・モノ・カネ・情報といわれていますが、それぞれの経営資源の大切さを理解した上で「ヒト」の側面から企業経営を支援するのが人事コンサルタントです。企業経営の支援に本当に興味を持つことが出来れば、事務処理だけに満足するのではなく、事務処理の効率化を図りその効率化によって捻出した時間を人事コンサルタントに向いている人の条件である「理論を学んで自分自身の軸を持つこと」、「実践経験を積むこと」に充てることができるようになります。
「企業経営の支援に興味がある人」は「理論を学んで自分自身の軸を持つこと」、「実践経験を積むこと」を継続することの推進力になるということです。
人事コンサルタントになる為の仕組み
今まで考察してきたとおり、人事コンサルタントに向いている人の条件に該当する為には個人の努力が不可欠です。今人事コンサルタントに向いていなくても、意識改革によって「人事コンサルタントに向いている人」に変わることもできます(私自身がそうでした)。しかしながら個人の努力には限界があり機会に恵まれない方も数多く見てきたことも事実です。そのような方々の為に「人事コンサルタント養成講座」をなかの経営労務事務所で開催しています。「人事コンサルタント養成講座」では「トライアングル人事システム」を中小企業向けに簡素化した「こぢんまり人事制度」の理論を学ぶことができますので、人事コンサルタントに向いている人の条件である「理論を学んで自分自身の軸を持つこと」を後押しします。
さらに「人事コンサルタント養成講座」では架空の会社の事例に基づく人事コンサルティングを実践して頂きますので、「実践経験を積むこと」についても後押しします。
私自身「なかの経営労務事務所」を設立するまでは、人事制度のコンサルティングについては全くの素人でした。
しかしながら企業経営の支援に興味を持ちながら「自分自身の軸」が持てるよう理論を学んでそれを実践に活かす、これらを継続することで、現在では、人事制度コンサルティングを既存の顧問先からの相談、HPからの問い合わせ、知人からの紹介等により安定して受注し実施することが出来るようになりました。
おわりに
さらに、私は今、師である河合克彦先生の遺志を引き継ぎ、人事コンサルタント養成講座を定期的に開催して現在では後進の育成にも取り組んでいます。
それは、人事コンサルティングは依頼業務が限定されますが、人事コンサルタント養成講座の講義においては広範な理論に裏打ちされた納得的な説明を受講生にしなければ理解を得られず幅広い知識や経験が求められる為です。
そういう意味では人事コンサルタント養成講座の講師の方が必要とされる知識や経験の範囲は比較にならないほど広いと感じています。
人事コンサルタント養成講座の講師を通じて私は飛躍的に成長出来ていると日々実感しています。
この機会に是非「人事コンサルタント養成講座」の受講をご検討下さい。お互いに学び合いましょう。

システム関連に強く、人事総務部門のトータルアウトソーシングのプランニングおよび受託を得意とする。さらに、人事労務系のコンサルティングに力を入れており、人事制度構築コンサルティングのほか、M&Aコンサルティング等、企業の経営企画部門、人事労務部門の双方の支援をしている。

