その他 更新日:2026年1月16日

外国人就労制限の変遷を概観し「育成就労制度」を正しく理解しましょう

外国人が日本国内で就労する為には、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)により就労が認められている在留資格を予め得ている必要があります。

  • ※諸外国では入国許可と労働許可を別に規制しているケースが多いようですが、日本の在留資格制度は滞在資格と滞在中の活動をまとめて「在留資格」として管理しているところに特徴があります。
これは外国人労働者の受け入れを規制することによって、日本人労働者を保護するばかりではなく我が国の人材不足へ対応する為です。

2024年に入管法及び技能実習法の一部が改正し、技能実習制度を廃止して人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度(原則3年間)が創設され、育成就労制度は2027年4月より施行されることが決まっています。
概要は次のURLをご確認下さい。

出入国管理基本計画(第2次)(出入国在留管理庁)

最近の入管法改正(出入国在留管理庁)
就労可能な在留資格は複雑化し、一見すると分かりにくい制度になっていますので、育成就労制度をより正しく理解する為には法改正の内容や制度の趣旨を押さえておきたいところです。

日本における外国人の就労制限の変遷

育成就労制度についてより一層理解を深める為に、我が国の外国人の就労制限の変遷について、なかの経営労務事務所で独自に調査した結果を時系列に解説するとともに育成就労制度の趣旨及び内容について以下のとおり解説していきます。

■幕末から明治初期にかけて

欧米諸国と締結した通商条約と国際慣習法に基づき外国人の入国が許可され、居留地域や行動範囲が制限された。

■第一次世界大戦期

第一次世界大戦を機に、旅券・査証制度を導入し、外国人の入国管理が厳格化された。

■終戦直後

終戦直後は、GHQ(連合国軍総司令部)統治下で出入国の管理が行われた。

■1950年〜

1950年外務省に入国管理庁が設置され、翌1951 年、「出入国管理令」の公布、1952年には外国人登録法が公布・施行された。

これらは日本において法に基づく入国管理制度の始まりといえる。
なお、当時の外国人政策は、在日韓国人・朝鮮人、在日中国人への対応が中心になっていた。
その後の高度経済成長期にあっても、日本人の雇用を確保する為に「単純労働者」の外国人労働者を受け入れない政策がとられてきた。

■1985年のプラザ合意以降

1985年のプラザ合意以降、円高が進行し、東南アジアを中心に日本企業の海外進出が相次いだ。

その反動で日本国内では「産業の空洞化」が話題となり、さらには周辺の発展途上国との経済格差から、表向きは観光ビザで入国して単純労働に従事するなど不法に就労する外国人労働者が急増した。
このような外国人労働者の増加を受けて、「第六次雇用対策基本計画」(1988年)では外国人労働者を「専門的・技術的労働者」と「単純労働者」に分け、このうち、「専門的・技術的労働者」は可能な限り受け入れるが、「単純労働者」については原則受け入れない方針を示した。
この方針に沿って 1989 年に入管法が大改正され1990 年に施行された。
この改正で新たに10種類の在留資格を追加するとともに、不法就労の取締り強化、違反者に対する強制退去手続きや罰則規定を整備した。
ブラジル、ペルーなどの日系人のように外国籍でも日本人の子または孫であれば「日本人の配偶者等」または「定住者」として就労に制限のない資格で滞在できる取扱いが開始された。
さらに「研修」の在留資格を、日本の技術・技能・知識を諸外国に移転し、相手国の人材育成や社会経済の発展を促すなど国際協力に貢献する目的で新設した。
なお、「研修」の在留資格により実質的に労働したとしても、外国人研修生は表向きには労働者ではないので労働法規は適用されなかった(支払われる研修手当は労働法規で保護される賃金に該当しなかった)。

■1993年「技能実習制度」創設

1993年からは研修終了後、研修を受けた機関との間で雇用契約を締結し、研修で習得した技術等を実践的に修得する技能実習制度が創設された。

在留資格は「特定活動」であり、研修と合わせて3年が上限とされ、技能実習生は労働者として労働法規が適用されるようになった。
しかしながら、外国人の単純労働を制限する日本の政策目的と実態が乖離し、研修・技能実習制度は実質的に低賃金単純労働の代替えとなっていることが問題視されてきた。
外国人技能実習制度とは(国際人材協力機構(JITCO))

■2009年入管法の改正

2009年に入管法が改正され、研修・技能実習生の保護強化を図るべく、実務研修を伴うものについては雇用契約を締結した上で実施させることとし、研修生には労働法規が適用されることとなった。

在留資格は従来の「特定活動」から、研修と技能実習を共に行うことができる「技能実習」という新たな在留資格に改めた。
【PDF】入管法が変わります!平成21年度出入国管理及び難民認定法等の一部改正のあらまし(法務省)
平成21年入管法改正について(法務省)
しかし、技能実習制度については、人権侵害、賃金未払い、長時間労働等の問題が指摘され、監督体制の強化が課題となった。
【PDF】技能実習制度の廃止とその後の外国人労働者受入制度  日本弁護士連合会資料(法務省)

■2016年「外国人技能実習法」が成立

2016年には外国人技能実習法が成立し、2017年に施行された。

制度の適正化の為に実習実施者が届出制、監理団体が許可制とされ、技能実習計画の認定や監理団体の許可等の事務を行う外国人技能実習機構が新設された。
従来の技能実習1号(1年)、2号(2年)に加えて、優良な実習実施者・監理団体に限定して、技能実習3号として2年間の受入れが可能(最大5年の受入が可能)とされた。
【PDF】技能実習法が成立しました!(厚生労働省)
【PDF】新たな外国人技能実習制度について(厚生労働省)

■2018年「特定技能」が在留資格として新設される

2018年に入管法改正により「特定技能」が在留資格として新設された。

特定産業分野に属する相当程度の技能を要する業務に従事する外国人を「特定技能1号」として、特定産業分野について上限5年までの在留を認めることとした。
特定技能1号の場合、家族の帯同は基本的に認められない。
熟練した技能を要する業務に従事する外国人を「特定技能2号」として在留期間の更新の制限はなく家族の帯同も認めることとした。
特定技能2号は更新の制限が無いため長期就労ビザである。
【PDF】出入国管理及び難民認定法 及び 法務省設置法 の一部を改正する法律の概要について(出入国在留管理庁)
入管法及び法務省設置法改正について(出入国在留管理庁)

■2020年「技能実習制度」が米国より批判を受ける。

2020年に米国務省人身取引報告書におけるランク付けで日本が「TIER 2 監視リスト」となる。

その主たる原因は技能実習制度にあり、技能実習制度に強制労働のリスクが存在していると批判を受ける。
【PDF】技能実習制度に対する国際的な指摘について 外務省資料(法務省)
2021年人身取引報告書(日本に関する部分)(在日米国大使館と領事館)
2024年人身取引報告書(日本に関する部分)(在日米国大使館と領事館)

「技能実習制度」の廃止と「育成就労制度」の展望

技能実習制度については、制度目的(技能移転等による国際貢献)と実態(人手不足解消のための労働力確保)の乖離や上記のとおり強制労働のリスクなど外国人の権利保護等の観点からの課題が指摘されてきた。

また、近年、我が国の人手不足が深刻化している一方で、国際的な人材獲得競争も激化していることから、
人手不足への対応の一つとして外国人にとって魅力ある制度を構築し、我が国の産業を支える人材を適切に確保することが重要である背景を踏まえ、2024年に入管法及び技能実習法を改正し、技能実習制度を廃止して人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度(原則3年間)を創設した。
  • ※技能実習法を抜本的に見直して「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)とした
育成就労制度と特定技能制度に連続性を持たせる(育成就労制度は特定技能制度への前段階として設計する)ことで、外国人が我が国で就労しながらキャリアアップできる分かりやすい制度とすることを目指している。
なお、育成就労制度は2027年4月より施行される。
育成就労制度Q&A(出入国在留管理庁)
【PDF】育成就労制度の概要(出入国在留管理庁)
※育成就労制度と特定技能制度に連続性はP2をご覧ください
育成就労制度(出入国在留管理庁)
育成就労制度とは(国際人材協力機構(JITCO))

まとめ

以上が日本における外国人の就労制限の変遷及び育成就労制度の趣旨及び内容です。

育成就労制度は、制度目的(技能移転等による国際貢献)と実態(人手不足解消のための労働力確保)が乖離している技能実習制度を廃止して、人材育成と人材確保を目的とする在留資格として創設されたこと、さらに育成就労制度は、特定技能制度と連続性を持たせる(育成就労制度は特定技能制度への前段階として設計する)ことで、外国人が日本で就労しながらキャリアアップできる制度として設計されていることがご理解頂けたのではないかと思っています。

最後に外国人を雇用するにあたり役立つパンフレットをご紹介します。
【PDF】外国人労働 者雇用マニュアル(東京都)
ポスター・リーフレット等(東京都)
【PDF】外国人雇用はルールを守って適正に(厚生労働省)
【PDF】在留資格の基礎知識(東京都)
外国人材と働くためのハンドブック(東京都)